藍色の研究

sunrisek6.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2014年 03月 14日

studio Dedé

ジャズヴォーカリストの西村知恵さんのレコーディングが、池袋studio Dedéで行われました。
彼女は経験は長いのですが、今回がファーストCDとなります。
エラ・フィッツジェラルドを敬愛し、彼女の音楽的な歌い方を深く理解していますが、声質は全く異なるためにイミテーターに陥る愚は冒していませんし、またそのことを本人は良く熟知しています。とかく音程の悪さが気になるヴォーカルが多い中、濃いブルースフィーリンが漂う彼女の歌唱はそのことに目を向けさせませんし僕はそうであるべきだと考えています。またリズムも正しい位置を保つ能力があり、ジャズのリズムに関しては器楽奏者であっても勘違いしているプロが多い中、賞賛すべきことのひとつだと感じています。
studio Dedé_b0094826_13545841.jpg

そしてこのアルバムに最大の貢献したのは、独自の世界観でアレンジと音楽の方向を決定づけたトランペットの高瀬龍一であることに間違えありません。とかく時代遅れのスタイルでヴォーカルを立てtる傾向にある日本のジャズ界において、自己の考えるジャズを通したことは高い評価を受けるべきでしょう。例えば美術において写実主義が最上だという狭量な批評家に、超現実主義の芸術作品について公の場で語る資格はありません。あくまで一個人の考え方としてのみ尊重されることは許されるのです。
studio Dedé_b0094826_1415475.jpg

ピアノは続木徹、ベースは高瀬裕。
studio Dedé_b0094826_145166.jpgstudio Dedé_b0094826_1444653.jpg
ベテランの流暢な演奏を披露していました。

ドラムスは小山太郎。
studio Dedé_b0094826_147932.jpg

総合的に音楽を理解している彼は、的確なドラミングでバンドを引き締めます。
個人的にも広瀬潤次や安藤正則と同じように、そのシンバル・レガートだけで僕はソロをインスパイアされるのですが、それは今日の録音の「I can't give you anything but love」で実現しています。

この録音の成功した大きな理由に、Studio Dedeの録音技術の高さは決して忘れることはできません。
社長の吉川昭二氏はドラマーでもありますが、我が国最高のレコーディングとマスタリング・エンジニアです。
studio Dedé_b0094826_14124668.jpg

ジャズを音として残し、多くの人々にその素晴らしさを伝えることは想像以上に重要なことです。また音楽家、演奏家も自分の本当の姿を客観的に見る機会を与えるのが録音です。もし稚拙な写真家が撮った写真ばかり見せられていれば、どんな俳優もモデルも自分に自信を保つことが困難でしょう。同じように楽器演奏家も粗悪な録音を聴いていると、自分の演奏技術の中で足りないものと正しい方向性の区別を付けようがありません。下手な録音は、音楽家に対する傷害罪を犯しているようなものです。メディアも同等の罪が適用されますが、ここでは割愛します。
とにかくstudio Dedeの録音は素晴らしい。プレイバックを聴きながら、モチベーションが上がって行くことは作品の出来に大きく影響します。昨年に椎名豊とのデュオの録音も評判が良かったのですが、今回も録音に関して素晴らしい作品となることは間違えありません。
studio Dedé_b0094826_1421502.jpg

録音の岡本司氏。良い作品のために労を厭わない素晴らしいレコーディング・エンジニアです。吉川氏も彼がきっちり録ってくれるからミックス・マスタリングが可能だと教えてくれました。彼は音の良さは機材が良いからだと謙遜していましたが、耳と腕が良くなければこのような音には成りえないでしょう。最終的にメイクアップと魅力的な衣装を身にまとってのリリースは来月です。お楽しみに。

by sunrisek6 | 2014-03-14 16:05 | 録音


<< 赤坂JOE      あれから3年 >>